今日は、とある地権者に対して、商業テナントによる事業用定期借地の提案を行った。
借地なので、通常であれば地代の多寡がポイントになるのだが、この地権者は近く発生するであろう相続を気にしていたことから、納税費用の捻出が課題になっていた。
そのため当初は、相続対策を提案したが、借り入れを起こすことに過度の抵抗があるため、好立地にもかかわらず資産圧縮手法が取れない状態からのスタートとなった。
もともとは当該地を売却して納税費用を捻出するつもりでいたようだったが、検討を重ねるうちに土地を手放さずに、前払い地代で納税費用が捻出できる可能性を探りたいとのことで、今回の提案となった。
前払い地代というのは、通常、契約期間中に支払われる地代を、一時期に一部、または全部まとめて支払うもので、平成17年から税法でも認められた手法で、賃借人は前払い地代として一時的にまとまった額を支払うが、一年ごとに費用計上できるメリットがある。また、賃貸人も同様で、一時所得にならずに1年ごとの収益計上できるので、双方にメリットがある。
しかし、借りる側からすると、店がオープンする前に先に地代を支払うことになるので、CF上はマイナススタートになるため、非常にハードルが高い。貸す側としても、中途解約の際は受け取った前払い地代のうち、未経過分は返還しなければならないリスクを伴う。
つまり、納税して無くなってしまった前払い地代の返還を要求される可能性が残っている。
そもそも、前払い地代を検討するに至った経緯は、過去に地権者が受けたマンション業者からの提案が、前払い地代で70年間の定期借地だったことに起因していて、これを店舗に応用できるのではないかと思ったことが始まりだ。
しかし、マンションの場合は分譲してしまうため、前払い地代を支払ったとしても、分譲完了時点で事業費を回収してリスクを購入者に転嫁できるため、立地さえ間違えなければ問題ないが、商業店舗の場合はリスクを負い続けることになるため同じようにはいかないのである。
この地権者の相続税は約6億とのこと。被相続人も既に100歳近い為、今から相続対策をする気力がないとのことで、家族会議で相続発生時には潔く納税することを選択している。
相続人本人も悔やんでいたが、もっと早く対策を取っておけばよかったと。
不動産コンサルとしても、相続対策でこれほど圧縮効果が得られるケースには滅多にお目にかかれないだけに、何とか安心させて効果的な相続対策を取って頂きたいと思う今日この頃である。