中野の閉店物件

とあるテナントから、閉店する予定の物件があるので、後継テナントを探してほしいとの依頼があった。

うちの会社で別の物件を貸しているテナントからの依頼である。賃貸借関係にあるテナントからは、たまにこういう依頼をされることがあるのだが、最近はコロナ禍で売り上げが激減していることもあり、こういった依頼が増えてきている。

自粛期間が過ぎたとはいえ、客足も戻らず開店休業状態では、人件費ばかりかかるので、あまり調子のよくなかった店舗の場合、早々に閉店してしまおうと考える企業も多いのだろう。

とはいっても、すぐに閉店できるお店というのは比較的恵まれているほうであろう。

というのも、通常テナントは人様から建物を借りて出店しているから、借りている建物に入居している場合は、閉店したからと言って賃貸借契約も即時に解消(解約)できることはほぼないからである。

通常は、契約で撤退する3ヶ月~6ヶ月前に予告してからやめるように取り決めているから、調子が悪いからと言って「はい、やめます」とはならない。

さらに言えば、中途解約は契約違反であるから、相応のペナルティを払う取り決めをしていることがほどんどである。建物を貸しているオーナー側からすると、当然、テナントにすぐにやめられては困るからである。

なにせ、オーナーはテナントに貸すための建物を、金融機関から借金をして建てているからで、その借金返済原資はほかならぬテナントからの家賃だからである。

今回のコロナ禍で政府は、建物のオーナーにテナントからの減額要望に応じるように促しているが、それをするなら銀行に対しても同じように借金の返済を待ってあげるように促さないと、経済混乱を阻止する上では意味をなさないことになる。

話が逸れたが、冒頭に書いたような閉店物件に後継テナントを見つけるのが私の本業である。業界内ではテナントリーシングと言われている。

今回、大手コンビニが手を挙げてきたのだが、これから先は経済条件を交渉しつつ、建物の建築的な課題をクリアしてからでないと、契約まで至らない。

これがまた長い道のりなのだが、幸いなことに立地が良いので、何とかまとまりそうな予感がしているし、無事にまとまってくれることを祈るばかりである。

不動産賃貸業の今後について

コロナウイルスにより、あっという間に世の中が変わってしまった。

日本では緊急事態宣言を以て、沈静化を目指しており、今のところ新規感染者をおさえることができている。

しかし、経済活動を見てみると誰の目にも明らかどころか激変してしまった。

特に飲食業界は売り上げが9割減などという話も耳にする。

さらに、テナントの場合には、家賃支払い免除を擁護する論調も目立っている。

この風潮は不動産賃貸業(不動産投資家)にとってはまさに悩みの種である。

自分が勤務している会社は、商業施設の開発をメインとしているが、今まさに自社商業施設に入居している各商業テナントから過去に類を見ない下げ幅家賃減額要求の嵐がはじまっている。

担当しているパチンコ店からは6ヶ月免除または50%減額、ゲームセンターも撤退申し入れ、回転すしも7割減額、中古車販売店からも50%減額など…。

確かに、テナントからしたら閉店要請により閉店していて売り上げが立たないため減額要求はやむを得ないのだろうが、俄には信じがたい減額幅である。

賃貸借契約書の条文には社会情勢の悪化により3~5%程度の増減を認める内容を入れることがあるが、今回は桁が違う

まさに異次元な要求である。

幸いにしてうちの会社はサブリース(借りた建物をテナントに転貸)している物件が多いので、賃貸人であると同時に賃借人でもあるため、最悪、建物所有者に対して家賃を減額してもらえば、会社の取り分を温存するという逃げ道がある。

しかし、そんなことをしたら、会社の存在意義がなくなる。

何しろ、建物所有者に対しては、建物を借り受ける際に「万一テナントが撤退しても、うちが間に入っていることで、別のテナントを見つけられるので空室リスクをなくせます」と言って相場より安く借り受けているから、いざという時に、容易に「減額して下さい」とは言えない。

しかし、今回は非常事態である。このままではテナントから頂く家賃より、大家に支払う家賃の方が多くなってしまうため、企業としては減額の申し入れをしても何ら不思議はない。

結局のところ、あおりを食うのは土地建物の所有者である。

特に、銀行から融資を受けて物件を取得している不動産投資家は、これから借入れ返済の猶予や免除の要請に奔走することになる。

要請に対し、銀行が「わかりました」と返済を待ってくれればよいが、今回はどうなることか?

不動産投資家として一つ言いたいことがあるとすれば、オーナーに対しテナントの家賃減額を認めるように要望するのであれば、同時に、金融機関に対しオーナーの借入返済の猶予(減額)を要望するべきである。

不動産賃貸業(特に商業)の受難の時代はこれからが本番である。