今日は、戸建ての古家を購入したい方からの依頼により、戸建ての所有者に売却の提案を行った土地の売買の話を書いてみる。なぜかというと家が建っているから宅地のはずなのに農地転用の届出が必要になったからで、備忘録もかねている。
なぜそうなったかと言えば、昭和40年ころに、現所有者が畑を取得して建物を建築。そのあと建物を増築するために追加で隣地を取得したのだが、この際、農地転用をせずに増築していたことが判明。昔は結構こういうケースがあったようで、農業委員会の担当者も、「では、農地転用届出を出してください」とサラッと言ってくるだけであった。
農地転用とは、その名のとおり農地を農地以外の用途に変えてしまうことなのだが、この場合に農地法の規制があって、事前に農業委員会に届け出る決まりになっている。
また、都市計画法の分類では、市街化区域と市街化区域外とに分けられており、市街化区域内は都市化を推進する区域なので、農地をなくす方向にあり、市街化区域外では農地を保護する方向にある。
このため、市街化区域外にある農地を転用する場合は、届出より厳しい許可が必要になってくる。基本的にこの区域では農地は保護されるべきものであるからむやみやたらに転用はできないことになっているが、幸い今回の農地は市街化区域内にあった為、届出で済んだ。
とはいっても、役所事であるから簡単にはいかないものである。今回は、所有権移転(売買)に伴う農地転用ということで、農地法第5条の届出というものになる。
ちなみに、所有権だけを移転する場合、つまり農地のまま売買をする場合、農地法第3条が適用され、営農者しか買えないことになっている。また、所有権移転をしないで、農地を他の用途に転用する場合は、農地法第4条が適用される。
話を戻して、今回の取引は、もともと宅地の売買だったはずだが、農地転用がされていなかったがために、農地転用というおまけがついてしまった。
しかも今回の取引は、売り主が何もしない条件であれば売却しても良いという条件で進めていたことから、最初は所有権を移転してから買主が農地転用をするつもりであった。ところが、そうすると、上記の通り農地法3条に該当することになり、買主は営農者ではないのでそもそも売買ができなくなってしまう。
これは困ったということで、やむなく売り主側で農地転用してから所有権を移転することになったわけだ。
しかし、売主が素人の為、直接申請ができないため、自分が代理で申請することになり、委任状やら、印鑑証明やらを用意してもらうことなった。
さらに、第5条申請は売主と買主が連名で申請を出す必要があるので、買主からも印鑑をもらう必要があり、買主が離島に転居しているため、船便でのやり取りとなったことで、余計に時間がかかることになった。
なんとか書類を整え、農業委員会の窓口に緊張の思いで赴いたが、無事に受け付けてくれた時には、深く安堵したものだった。
今回の取引は、戸建ての売買ということですぐに終わると思っていたが、ふたを開けてみると内容盛りだくさんだった。
ヤキモキした割に大した報酬は頂けないが、色々と勉強になったということで良しとしておこう。